リュナン |
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「ラゼリア……
ようやく帰ってきたな……」 |
オイゲン |
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「そうです、この館から逃れて
早2年にもなりましょうか」 |
リュナン |
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「2年……か……」 |
オイゲン |
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「そういえばアーキスを忘れておりました
奴の軍律違反は重罪です
相応の処分をせねばなりますまい
おい誰か、アーキスを連れて来い」 |
アーキス |
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「どうも……すみませんでした……」 |
オイゲン |
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「すみませんですむか、このばか者!
お前一人のために、皆がどれほど
迷惑したのか知っておるのか!」
「敵前逃亡をした上に、主君に刃を
向けるとは、もはや死罪は免れぬ
そこになおれ!
わしがその首をはねてやる!」 |
リィナ |
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「待って!
お願いします
アーキス様を許してください!」 |
オイゲン |
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「うん?……
お嬢さんはどなたかな?」 |
リィナ |
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「騎士クライスの妹、リィナです
アーキス様は私を助けようとして
軍律を破ったの
彼は悪くありません!
もしどうしてもと言うなら
私を罰してください!」 |
オイゲン |
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「ほう……健気な娘だが
なぜアーキスを庇うのだ?」 |
リィナ |
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「私はアーキス様の許婚です
未来の良人が処刑されるのを
黙って見てはいられません!」 |
アーキス |
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「お、おい、リィナ……」 |
リィナ |
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「アーキス様の罪は私のせいです
まずは私を罰してください!
それまではここを動きません!」 |
リュナン |
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「オイゲン、もういいだろう
アーキスも、もう二度と勝手な事はするな
オイゲンがどれほど心配したか……
見ているのも哀れなほどだったぞ」 |
アーキス |
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「リュナン様、オイゲン将軍
申し訳ありません……」 |
オイゲン |
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「うむ……、今日のところは
その娘に免じて許してやる
お前ももう少し大人にならねば
命を永らえることはできぬぞ」
「いっそ、その娘と一緒になって
ラゼリアで商売でも始めてはどうだ
お前にはその方が似合っておるぞ」 |
アーキス |
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「隊長、バカなことを言わないで下さい!
こいつはまだ子供じゃないですか」 |
リィナ |
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「あの……
アーキス様は私が見守ります
必ず立派な騎士にいたしますから
許してあげてください」 |
オイゲン |
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「なるほど……それはよいかも知れぬ
娘さんの方が
よほどしっかりしているようだし
アーキスのことは
あなたにお任せいたしましょう」 |
リィナ |
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「はい、一生懸命、頑張ります!
行きましょう、アーキス様
皆が心配して待っているわ」 |
アーキス |
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「ちぇ……
なんかオヤジにはめられたような
気がするぜ……」 |
長老 |
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「リュナン様
お疲れでしょうが、市民たちが
公子のお声をお聞きしたいと
館前に詰め掛けております」
「テラスからでよろしいので
どうか声を聞かせてやってくださいませ」 |
リュナン |
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「そうですね……
市民には長い間
辛い思いをさせてしまったから……」 |
長老 |
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「おっと
大切な事を忘れておりました
リュナン様
どうぞこれをお召しくださいませ」 |
リュナン |
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「これは?……」 |
長老 |
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「ラゼリアの太守の証となる聖なる鎧です
リュナン様が成人されたときに
お渡しするようにと
グラムド様から預かっておりました」 |
リュナン |
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「父上が?……」 |
長老 |
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「はい
ノルゼリアに向かわれる前日のことです
グラムド様はご自分の運命を
予期されていたのかもしれませぬな」 |
リュナン |
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「父上……」 |
長老 |
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「さあ、リュナン様
お召し変え下さいませ」 |
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リュナン |
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「長老、これでよいのだろうか」 |
長老 |
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「おおっ、これはご立派に!
そのお姿を拝見すれば
市民たちもきっと感激いたしましょう」
「さあ、皆が待っております
テラスの方へ参りましょう」 |
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長老 |
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「……と言うことで
リュナン様は多くの困難を乗り越え
我らを帝国の圧政から救うために
お戻り下されたのじゃ
みなもよく感謝せねばなるまいぞ」 |
リュナン |
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「長老はあのように言われたが
私は皆に詫びたいと思う
私は太守の子でありながら
祖国を守ることができなかった
父上の遺志を継ぐことができなかった」
「この2年間……
ラゼリア市民には耐えようの無い
苦しみを与えてしまった」
「本日私は、長老たちの進言を得て
正式にラゼリア太守になった
私は父上を見習い
よき太守になりたいと思う」
「だがリーヴェ王宮は
いまだ帝国の支配下にある
この悲惨な戦争を一日も早く
終わらせたいと願っている……」 |