ジュリアス |
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「バルカ兄上
おられますか
至急に相談したいことがあるのです!」 |
バルカ |
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「ジュリアス!?
ゼムセリアから戻ってきたのか
父上は酷くお怒りだぞ
お前を捕らえて王都に送れとまで
言われている
一体どうするつもりなのだ!」 |
ジュリアス |
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「私のことなどどうでもよいのです
それより北カナンの情勢は
聞いておられますか」 |
バルカ |
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「反乱軍の噂なら聞いている
しかし俺は許せぬな
よりにもよって
アーレス兄上の息子の名を騙り
兄上を慕う民衆を惑わすとは……」 |
ジュリアス |
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「彼らを偽者だと言われるのですか」 |
バルカ |
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「当然だろう
14年前、兄上の館が賊に襲われ
セレーヌ夫人や女官が殺されたのは
セネトがまだ
2歳になったばかりの頃だ」
「焼け落ちた館からは、セネトも
生まれたばかりのネイファも
発見されなかったが
あの状況では生きてはおるまい」
「兄上も亡くなるまで探し続けられたが
それでも見つけられなかった
それが
この時期になって突然現れるとは
都合がよすぎるとは思わないか」 |
ジュリアス |
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「アーレス兄上は
ソフィア大公国のレシエ公女に
セネト捜索を命じられていた
そのレシエが
彼らと一緒に戻ってきているのです」 |
バルカ |
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「ま、まさか……
ジュリアス、それは本当なのか!」 |
ジュリアス |
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「ええ、私も最初は耳を疑いました
しかしセオドラはレシエ姫に会って
確かめたと言っております
その少年がセネトであることは
まず間違いありません」 |
バルカ |
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「あの幼子のセネトが……
アーレス兄上の子が
生きていたのか……」
「だがそれならなぜ反乱を起こすのだ
彼らはセネトを利用して
カナン帝国を奪おうとしているのか」 |
ジュリアス |
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「他の者ならいざ知らず
レシエはそんなバカではありませんよ
いずれにしても我ら二人に会うために
密かにこちらへ向かっているとのこと
詳しいことは
彼女に会えばわかるでしょう」 |
バルカ |
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「だがジュリアス
リーヴェ解放軍との戦いはどうするのだ
ラゼリアのレンツェンが援軍を送れと
うるさく言ってきているぞ」 |
ジュリアス |
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「レンツェン……
ああ、あの男のことですか
奴の始末はリュナンに任せましょう
あんな恥知らずが仲間と思われては
我らがカナンの汚れになります……」 |