リュナン |
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「では市長
どうしてもだめだと言われるのですか?」 |
市長 |
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「何度も申しておりますように
このセネー市は中立を条件に
帝国より自治を許されておるのです」
「軍隊の立ち入りは
絶対に許可できませんな」 |
オイゲン |
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「しかし市長
北には帝国の大軍が
集結中というではないか」
「おぬしらは
自由都市の一員でありながら
我らを見殺しにするつもりか?」 |
市長 |
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「この戦争は
我ら一般市民はあずかり知らぬこと
巻き込まれるのは迷惑ですな」
「それでもなお、街へ立ち入るとなれば
我々は自衛の為に戦わねばなりません」 |
オイゲン |
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「くっ……
なんと身勝手な……」 |
リュナン |
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「もういい、オイゲン」
「市長
あなたの言いたいことはわかった
もう少し考えてみよう……」 |
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おばさん |
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「へぇー、女の騎士とは珍しいね
アンタ、帝国の兵隊さんかい」 |
シャロン |
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「違うわ、街に雇われたのよ
傭兵としてね」 |
おばさん |
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「市長もバカだねぇ
どうせ雇うならもうちょっと
強そうなのにすりゃいいのに
これじゃまるで、ドブに金を
捨てるようなもんだ……」 |
ビルフォード |
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「……おい、女将
大した目利きのようだが
俺はどうだい?
ちっとは強そうにみえるかい?」 |
おばさん |
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「アンタはいいねぇ
歴戦の勇者って感じだね
そこのお嬢ちゃんとは違ってね」 |
ビルフォード |
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「ところがな
そこのお嬢ちゃんには
この俺も歯がたたねぇんだよ!
ババァ!
人をなめるのもほどほどにしろ!」 |
おばさん |
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「ひ、ひぇ〜」 |
シャロン |
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「ビルフォード、もうやめて
こんなところでみっともないわ」 |
ビルフォード |
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「はっ、シャロン様
申し訳ありません!」 |
シャロン |
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「でも、私たちも落ちたものね……
祖国を取り戻すつもりが
こんなところで傭兵をしてるだなんて……」 |
ビルフォード |
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「ですから、シャロンお嬢様は
宿でお待ちくださいと申し上げたのです
食べる程度のことならば
この私がどうとでもいたします!」 |
シャロン |
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「違うわ、ビルフォード
そんなつもりで言ったのではないの
いつになったら国に帰れるのかと
少し焦っているだけよ」
「別に傭兵をするのが嫌なわけじゃないから
心配しないで」 |
ビルフォード |
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「お嬢様のお心のままに……
私はただ従うのみです」 |
シャロン |
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「あ、そろそろ交代の時間ね
街の警備に出ましょうか
報酬分は働かないとね……」 |
ビルフォード |
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「はっ……」 |
おやじ |
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「……
なんだ、あいつら
見かけねぇ奴らだが……」 |
おばさん |
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「フン……
たぶん国を失って路頭に迷っている
やつらだろ
威張っていられるのも今のうちさ」 |
おやじ |
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「ふむ、あの娘も悪くはなかったが
わしらの手には余りそうだな
もう少し大人しい娘がいいだろう」 |
おばさん |
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「無理やりさらってオークスの歓楽街で
踊り子にしようってんだろ
アンタもワルだねぇ……」 |
おやじ |
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「ふっふっふ……
人のことが言えるのか?」
「では、わしは隠れておるから
大人しそうな娘が来たら合図しろ
いいな、女将」 |
おばさん |
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「あいよ、任せときな」 |
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ミンツ |
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「エルンスト将軍
久しぶりだな」 |
エルンスト |
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「ミンツ、元気そうで安心したぞ
釈放されたと聞いて
お前を部下にもらいうけたが
迷惑だったか?」 |
ミンツ |
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「いや、将軍の配慮には感謝している
ゾーアの流刑地に行くくらいなら
将軍の下で働いた方がましだからな」 |
エルンスト |
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「ふっ……
相変わらず口の減らぬヤツだ」
「まあ、いい
この最前線なら
ガーゼルの神官どもも手は出せまい」
「我が15兵団は
この草原地帯を守っているが
敵が近づかない限り
戦うつもりはない
お前もゆっくりと養生することだ」 |
ミンツ |
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「セネー砦の司令官
パブロフとか言ったな……
あいつが危なくなれば
どうするつもりだ」 |
エルンスト |
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「無論、助けに行くつもりなどない
それどころか
わし自身の手で殺したいくらいだ!」 |
ミンツ |
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「ははは……
それを聞いて安心したぜ」
「もう一つ聞いておくが
俺が逃亡したらどうする?」 |
エルンスト |
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「ミンツ、お前には妻子はおるまい
何をためらうことがある?」 |
ミンツ |
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「それでは将軍に迷惑がかかるだろう」 |
エルンスト |
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「わしは何も知らぬ
騎士一人が逃亡したところで
まさか処刑はされまいよ」 |
ミンツ |
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「ふん、あんたらしいや」
「まあ
結局は逃げることになると思うぜ
あの娘を助け出すためには
兵士の2、3人は殺らねばならん
どのみち反逆者になるのは
間違いないからな……」 |