オイゲン |
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「リュナン様、砦の中に
帝国の指揮官らしき者が倒れております」 |
リュナン |
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「なに?
まだ意識はあるのか」 |
オイゲン |
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「神官に手当てをさせておりますが
そう長くは持たぬかと……」
「公子にお会いしたいと申していますが
いかがいたしましょう?」 |
リュナン |
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「わかった、僕の方から会いに行く
オイゲン、案内してくれ」 |
オイゲン |
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「はっ!……」 |
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リュナン |
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「あなたが守備隊の指揮官か?
私に話があるとか……」 |
ケイモス |
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「……お願いする……
どうか……部下たちを……
殺さないでくれ……」 |
リュナン |
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「当然のことだ
降伏したものは厚く保護する
それがラゼリアの軍法だ
安心しろ、将軍」 |
ケイモス |
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「そうか……
かたじけない
リュナン公子……これをあなたに……」 |
リュナン |
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「これは……鋼の盾!?」 |
ケイモス |
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「カナンを……
我が祖国を……救ってくれ……」 |
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リュナン |
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「オイゲン、どういうことだ?
我らはゾーア帝国と戦っているのに
その中心国家であるカナンの将軍が
僕に祖国を救えという
これは一体どういうことなんだ?」 |
オイゲン |
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「帝国も一枚板では
ないということですな」
「ゾーア帝国はカナン国王バハヌークが
20余年の歳月をかけて
旧ゾーア地方の5王国を統一し
近年になってようやく成立したもの
ましてやガーゼル教国との同盟は
わずか一昨年になされたものです」
「また老齢となったバハヌーク皇帝は
若き后に溺れ、彼女の言うがままとの
噂もございます
帝国がかろうじて持ちこたえているのは
有能な二人の王子
バルカとジュリアスの働きによるものと
もっぱらの噂でございますな」 |
リュナン |
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「そうだったな……
カナンの3連星……
子供の頃
よく父上から聞かされたものだ」 |
オイゲン |
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「第一王子のアーレス殿下と
グラムド大公は、戦場で何度も相対し
お互いの力を認めあって
盟友となられた間柄です」
「ノルゼリアの和約も
お二人のご努力によって
実現されようとしていたのです」 |
リュナン |
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「それを……あのミュースが
焼き尽くしてしまったのか……」 |
オイゲン |
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「さよう
ノルゼリアの住民数千人とともに
アーレス王子も、そして
グラムド様も亡くなられました」 |
リュナン |
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「オイゲン
一体誰が何のために
リーヴェ王家の守護聖竜を
殺戮に用いたんだ!」 |
オイゲン |
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「それは、わかりませぬな……」
「ゾーア帝国の民は
敬愛するアーレス王子をリーヴェが
だまし討ちしたとして怒り狂い
我らもまた、ノルゼリアの殺戮は
帝国の仕業と憤っておりまする
ようするに
誰もが望まぬ結果となったわけです」 |
リュナン |
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「誰もが望まない……
果たしてそうだろうか?」 |
オイゲン |
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「と、申されますと?……」 |
リュナン |
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「カナンとリーヴェが憎しみあえば
利を得るもの……それは……」 |
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