メリエル |
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「おばさん、ごめんなさい……
わたし、やっぱり行きます!」 |
おばさん |
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「いいよ、もう止めはしないさ
でも一つだけ覚えておいて」
「アタシの亭主と息子は
イストリアの侵略から
女や子供たちを守るために戦った
アタシはね
バカな男たちだと言ったけど
それでもやっぱり、誇りに思うのさ」
「アタシの亭主、アタシの息子……
アタシを守るために戦うと言ってくれた
お嬢ちゃん、忘れないで
大切なものを守るために戦うの
それだけは忘れないでね」 |
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メリエル |
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「メーヴェ様!?……
メーヴェ様でしょう!」 |
エンテ |
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「メリエル!?
どうしてあなたが……
レネ様の教会ではなかったの?」 |
メリエル |
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「ええ……
リシュエル兄様を探したくて
教会を抜け出してきました
帝国の監視も少しは
緩くなったかと思って……」 |
エンテ |
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「内緒で出てきたの?……
レネ様はきっと心配してるわ」 |
メリエル |
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「レネ姉様には手紙をおいてきました
すぐに帰るから心配いらないって」 |
エンテ |
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「メリエル……
あのね……」 |
メリエル |
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「もう決めたの
お小言なら聞きたくありません!」 |
エンテ |
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「ふぅ……
でも、どうしてマール港に?」 |
メリエル |
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「陸路は帝国に封鎖されているから
船しかないと思って……」
「でもリーヴェ行きの船はなくて
今日まで宿屋のおばさんに
お世話になっていたの」 |
エンテ |
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「それで……メリエルは
魔道士として戦うつもりなの?……」 |
メリエル |
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「私はガーゼルが憎いの……
おじい様を奪われ、その上
大好きなお兄様までも……」
「メーヴェ様、あたし……
もう……逃げるのは嫌!
お兄様を探しだして
私もガーゼルと戦います!」 |
エンテ |
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「メリエル……」
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エンテ |
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「リュナン様、お願いがあるのですが……」 |
リュナン |
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「なんだいエンテ
君が頼み事をするなんて珍しいな」 |
エンテ |
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「あの……この子をしばらく
預かりたいのです
私が責任を持って見ますから
置いてやっていただけませんか?」 |
リュナン |
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「君は……魔道士なのか?」 |
メリエル |
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「ええ、始めまして、リュナン様
わたし、メリエルといいます」 |
リュナン |
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「エンテ
よければ理由を聞かせてもらえないか?」 |
エンテ |
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「はい……彼女はリーヴェ神殿の大神官
マイオス様の孫娘なのですが……」 |
オイゲン |
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「な、なんと!?
水の神官家の娘だと言われるのか!」 |
メリエル |
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「はい!
二年前、神殿がガーゼル軍に襲われた事は
ご存知でしょうか?」 |
オイゲン |
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「その事件ならよく存じております
神聖なる水の神殿が賊に襲われ
大神官を始めとして多くの方々が
亡くなられた……」
「私などは、神官家の方全員が
亡くなられたものと思っておりましたが」 |
メリエル |
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「いえ……私は兄さまに助けられて
脱出することができました」
「ブラードの街の教会に
従兄弟のお姉さまがいらっしゃって
一年間身を寄せていました」
「でも兄からは何の知らせも無くて
もう心配で心配で……」 |
リュナン |
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「それで兄さんを探しに
一人で出てきたわけか……
オイゲン……」 |
オイゲン |
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「わかっておりまする
兄弟を思う気持ちは誰しも同じ
よいではありませぬか」
「水の神官家の一族とあらば
たとえ歳若くとも有能な魔道士に
違いありませぬ
力を貸してくださるというなら
喜んでお受けいたしましょう」 |
リュナン |
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「いいだろう……だけどメリエル
僕の指示には従って欲しい
君を前線に立たせるつもりはないから
エンテ、それでいいだろ」 |
エンテ |
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「はい、無理を言ってごめんなさい
よろしくお願いいたします」 |
メリエル |
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「ありがとう、リュナン様、エンテ様
それに、おじさまも!」 |
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アルベルト |
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「ラゼリアのリュナン様ですね
私はリチャード王子の部下
アルベルトと申します」
「我が主君が公子にぜひお会いしたいと
申しております
ご足労ですがマール王宮まで
おいで願えぬでしょうか」 |
リュナン |
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「ええ、喜んでお伺いいたしましょう
リチャード王子
それにレダ同盟のティーエ王女には
ぜひ一度
お目にかかりたいと思っておりました」 |