オイゲン |
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「何とか城下は抑えましたな
なかなか厳しい戦いでした」 |
リュナン |
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「コッダは王宮の中か
王妃を人質にとられては戦い辛いな」 |
ライネル |
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「その心配はないぜ
城内は俺たちが制圧した
コッダの兵も全員降伏したし
ほら、こいつもこの通り……」 |
コッダ |
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「うぐぐ……
離せ、この反逆者ども!」 |
ライネル |
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「反逆者はてめえだろうが!
公子、こいつは俺に任せてくれ
八つ裂きにして、カラスのエサにしてやる!」 |
リュナン |
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「君は?……」 |
ライネル |
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「ああ、すまねえ
俺は王宮騎士団のライネルだ」
「コッダに処刑されるところを
衛兵に助けられてよ
反宰相派の兵士たちとともに
反攻の機会を待っていたんだ」
「あんたたちのおかげで王宮内が
手薄になったから
一斉に立ち上がったって訳だ」 |
ノートン |
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「なんだ?
……貴様はあの時の……
まだ生きていたのか?」 |
ライネル |
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「ノートン!?
なぜお前が解放軍にいるんだ?
あんときゃ、あれだけ説得しても
自分には関係ねえと言ってたのによ」 |
ノートン |
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「ふ……
俺は最初から王妃の味方だ
貴様などにはわかるまい……」 |
ライネル |
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「ほー……」 |
リュナン |
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「コッダ宰相、何か言うことはあるか?」 |
コッダ |
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「お……おお……
貴公がリュナン殿か
頼む、助けてくれ!」
「わしはこの国を思えばこそ
憎まれ役になったのだ
国が一つにならねば
帝国とは戦えぬゆえ……」 |
リュナン |
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「私利私欲では無かったと?」 |
コッダ |
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「無論だ、現に王妃には指一本触れておらぬ
王妃が望まれるのであれば
宰相の地位もマーロン殿にお返しする
わしは領地に戻り謹慎するゆえ
どうか命だけは許してくれ!」 |
リュナン |
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「あなたの罪を決めるのは私ではない
マーロン伯、どうしますか?」 |
マーロン |
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「コッダの罪は明らかだが
私が処罰しては私情と思われましょう
処分は国王帰国後に決めていただくのが
よろしいかと……」 |
オイゲン |
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「いささか手ぬるいとは思いますが
新宰相のご意見とあらば
やむをえませぬな」
「コッダ伯爵、マーロン宰相の温情に
感謝する事だな!」 |
コッダ |
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「マーロン伯……
このご恩は一生忘れませぬ……」 |
マーロン |
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「勘違いするなよ、コッダ
ロファール王が戻られれば
貴公は謀反人として
極刑に処せられるであろう」
「それまでは重罪人として
厳しく監視させてもらう
逃げようなどとは考えぬことだ」 |
コッダ |
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「くっ……」 |
マーロン |
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「衛兵、この男を牢に入れろ
監視を怠ってはならぬぞ!」 |
衛兵 |
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「はっ……」 |
マーロン |
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「ではリュナン様
リーザ様の元へご案内いたしましょう」 |
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リュナン |
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「リーザ様、お久しぶりです
お元気な姿を拝見して安心いたしました」 |
リーザ |
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「リュナン公子……
噂は聞いていましたが
まさか本当にウエルトにおいでとは
これも女神のお導きなのでしょうか……」 |
リュナン |
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「いえ、もう少し早く来ていれば
リーザ様にもサーシャにも
こんな辛い思いはさせなかったのにと
悔やまれてなりません」
「私の思いが至らなかったことを
どうかお許しください」 |
リーザ |
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「リュナン様……」
「グラムド大公はお亡くなりになり
ラゼリア公国も
帝国の占領下にあると聞いています
それなのに、どうしてこんな
遠い国のことまで考えられましょう」
「リュナン様は立派になられました
私の記憶の中のリュナン様は
元気で可愛い男の子でしかなかったのに
今、私の前にいる少年は紛れもなく
英雄グラムドの若かりし頃のお姿
懐かしく思い出されます……」 |
リュナン |
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「リーザ様?……」 |
リーザ |
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「あっ、ごめんなさい
それでリュナン様は
これからどうされるのですか」 |
リュナン |
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「祖国に戻り帝国と戦います」 |
リーザ |
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「帝国と戦う?……」 |
オイゲン |
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「実は王妃様
我らがウエルトに参ったのは
帝国と戦うための兵力や軍資金を
お借りしたかったからです」 |
リュナン |
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「オイゲン、その話は……」 |
オイゲン |
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「リュナン様
何も恥じることはありませぬ
我らの戦いは大陸すべての人のため
協力は当然でありましょう」 |
リーザ |
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「ええ、リュナン様
オイゲン将軍の言われるとおりです」
「我が良人、ロファール王も
世界を救わんとして
バルトへ出陣されました」
「これは私からのお願いです
どうかウエルトの将兵をお連れ下さい
この混乱の闇に包まれたリーベリアに
再び正義と秩序が回復されますよう
そしてリュナン様が再び
祖国ラゼリアの大地に立てますよう
私も可能な限りのお手伝いを
させていただく所存です」 |
リュナン |
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「リーザ様、感謝いたします!」 |
リーザ |
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「ただ、コッダの浪費により現在の国庫には
二万Gしか残されていません
わずかですが、その全てを
軍資金としてあなたに差し上げます」 |
リュナン |
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「しかしそれでは……」 |
リーザ |
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「よいのです
国民たちもきっと
納得してくれるでしょう」 |
リュナン |
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「はい、ではお言葉に
甘えさせていただきます」 |
リーザ |
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「あとは兵力ですが……」 |
リュナン |
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「それについては、すでにマーロン伯から
多大な援助をいただきましたし
また戦いの中で多くの者たちが
自ら参加してくれました
彼らを連れてゆくことを
お許し願えるならそれで十分です」 |
リーザ |
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「そうですか……
では、出陣はいつに?」 |
リュナン |
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「こちらのことは
マーロン伯にお任せして
明朝にでも出発したいと思います」 |
リーザ |
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「そうですか……
サーシャは寂しがるでしょうね……」 |
サーシャ |
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「どうしてですか、お母様?
私もリュナン様とご一緒するのに」 |
リュナン |
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「サーシャ、何を言っているんだ?
君を連れてゆくつもりはない
当たり前だろう」 |
サーシャ |
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「リュナン様、せめて
バルト要塞までお供させてください
私はどうしてもお父様を探したいの」
「もう決心したの
ダメと言われてもついてゆきます!」 |
リーザ |
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「……リュナン様
この子の望みを叶えてやってくれませんか
この子は昔から
一度言い出したら聞きません」 |
リュナン |
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「しかしリーザ様……」 |
リーザ |
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「本当は、私がバルトに行きたいくらいなの
ロファールはサリアの森で生きています
私の故郷……サリアの森の人たちが
良人を見捨てるはずがありません」
「サーシャ、リュナン様と共にお行きなさい
その旅は苦難に満ちているでしょうが
あなたは私の娘
きっと乗り越えてくれると信じています」 |
サーシャ |
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「はい、お母様!
お父様は必ず私がお連れして帰ってきます
そのときまで、どうか……」 |
リーザ |
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「まあまあ……
今言ったばかりなのにもう涙……
そんなことではリュナン様の
お荷物になってしまいますよ」
「あなたの身体には
サリアの戦士の血が流れているの
サーシャ、負けてはだめよ
女だからと甘えるのもだめ
自分のことは自分でなさい
そして、自分の命は自分で守るのです
わかりましたね」 |
サーシャ |
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「は……はい……お母様……」 |