長老 |
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「プラム
その旅支度は、一体……」 |
プラム |
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「ごめんなさい……
あたし、エンテ様と一緒に行きます」 |
長老 |
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「そうか……
やはりのぉ……
運命には逆らえぬのか……」 |
プラム |
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「えっ?……」 |
長老 |
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「プラム、この手鏡を持っておいき
プラムが旅立つ時が来たら
渡して欲しいと、お前の母さんから
預かっていた物だよ」 |
プラム |
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「母さんが……」 |
長老 |
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「ランはこの日が来るのを
予感していたのだろうな……」
「あの娘は、貧しい家に生まれ
芸人の一座に売られて踊り子になった
それはもう、辛い辛い毎日で
何度も、死のうと思ったそうじゃ」
「そんなとき、一人の若者が現れて
ランを一座から救い出してくれた
ランはその若者と愛しあい
お前を授かったのじゃ……」 |
プラム |
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「でも、その人は
戦争で亡くなったのでしょう
だから母さんは、父さんと再婚して
この村に来たのだと聞きました」 |
長老 |
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「……ダロスはわしの不肖の息子でな
妻に先立たれ、幼子をわしに預けて
ブラードの街で傭兵をしておった
そんなときに身重だったランと知り合い
一方的に好きになってしまったのじゃ」 |
プラム |
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「一方的に?……」 |
長老 |
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「……ランはダロスに
抱きかかえられるようにして
この村にやってきた
わしらは
天女が舞い降りてきたのかと思ったよ
それほどに、美しい娘じゃったたから……」
「ダロスはお前たちを守るために
必死に働いた
そして、ランが流行り病に倒れた後は
後を追うように死んでしまった
結局、彼女には指一本触れられぬままに……」 |
プラム |
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「あたし……
父さんが可哀想だと思っていました
母さんはどうして
父さんを愛せなかったのですか?」 |
長老 |
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「愛してなかったわけじゃない
認めることが出来なかっただけじゃよ
それほどに、お前の父親を
愛していたのだろう……」 |
プラム |
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「えっ?……」 |
長老 |
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「プラムや、この手鏡はランが
お前の父親からもらった物
お前にとっては、本当の父親を見つける
唯一の手がかりだ
その意味がわかるかの?……」 |
プラム |
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「本当の父親を見つける?……
ま、まさか……」 |
長老 |
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「わしのせがれを恨まないでおくれ……
ランが村に留まってくれたのは
年老いたわしらを哀れみ、幼いバーツを
愛おしく思ってくれたからなのじゃ……」 |
プラム |
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「……おじいさん
この話、お兄ちゃんはしらないのでしょう?
だったら絶対に言わないで!
お願い……絶対に……言わないで……」 |
長老 |
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「わかっておるよ、プラム
お前はランに似て、心優しい娘だ
きっとわかってくれると思っていた……」
「ブラードに行けば、父親の手がかりも
見つかるだろう
さあ、もう泣くのはおよし……
お前の幸せを祈っておるよ……」 |
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