長老 |
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「ジュリアさん、本当に大丈夫かの?」 |
ジュリア |
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「ええ、なんとかやってみます」
「村の人たちには親切にしてもらったし
シスターエンテには命を救われました
せめて私にできることで
ご恩返しをしたいのです」 |
長老 |
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「そうか……決心は固いようじゃの
ならばこの必殺の剣をお持ちくだされ」 |
ジュリア |
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「これは?
……キルブレード!
このような高価なものを私に!?」 |
長老 |
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「旅の商人が置いていったものじゃが
この村には扱えるものがおらぬ
ジュリアさんなら使えるじゃろ」 |
ジュリア |
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「はい、この剣さえあれば
山賊など敵ではありません!」 |
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バーツ |
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「シスター、大丈夫か?」 |
エンテ |
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「は……はい……」 |
バーツ |
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「だけどシスター
お人よしにもほどがあるぜ
いくら病気で困っているからと言って
山賊のアジトまで一人で行くなんて
まったく無茶な話だぜ」 |
エンテ |
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「あの方は本当に危なかったのです
もう少し遅ければ
命を失っているところでした」 |
バーツ |
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「だけどさ
元気になったら急に態度を変えて
シスターを牢に閉じ込めたわけだろ
あのヤーザムのやりそうなことだ」 |
エンテ |
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「ヤーザム?……」 |
バーツ |
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「トーラス山賊のボスさ
シスターが救ったのは
数ある山賊の中でも
一番下劣で残虐な男なんだ」 |
エンテ |
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「ごめんなさい……
でも……」 |
バーツ |
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「ああ、わかってるさ
困っている者がいたら
まずは助けよというのが
エーゼンバッハ師の教えなんだろ」
「えっと……
確かマルス神殿の大神官だったよな」 |
エンテ |
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「はい、そして水を司る神
マルスの教えでもあります」 |
バーツ |
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「ふーん……
でもシスターは偉いよなぁ」
「俺の妹と同じくらいの歳なのに
あいつとはぜんぜん違う
しっかりしてるというか……
たくましいというか……」
「何も恐れず、何も求めず……
一体どうしたらそんなに強くなれるんだ?」 |
エンテ |
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「私は強くなんてありません!!
私は……ただ……」 |
バーツ |
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「あっ、ごめん!
オレ、なんか
ヘンなこと言っちゃったかな……」 |
エンテ |
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「あ……いえ……
なんでもありません」 |
バーツ |
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「そうか、ならいいんだけど」
「やべぇ
のんきに話している場合じゃないぜ
山賊どもが追ってきやがった」
「シスターはオレの後ろに隠れていろ
ここは一本道だ
下手に動くと囲まれちまう!」 |
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ラフィン |
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「公子、南に見えるのがトーラス村だ
山賊たちのアジトは西の方角にある」 |
リュナン |
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「それで開拓村の様子は?」 |
ラフィン |
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「今はまだ無事のようだ」 |
リュナン |
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「どうしてわかるんだ?」 |
ラフィン |
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「奴らは略奪してから火をつける
襲った村には何一つ残さないのが
トーラス山賊のやり方だ」 |
リュナン |
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「酷い奴らだな……
僕たちも遠慮はいらないという事か」 |
ラフィン |
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「無論だ
奴らには相応の報いを与える
目には目を、歯には歯をだ」 |
リュナン |
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「大人しく降伏しても殺すのか?」 |
ラフィン |
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「俺たちが許しても村人は承知しない
家を焼かれ、親兄弟を殺されて
ごめんなさいではすまないだろう」
「奴らも
捕まれば殺されるとわかっているから
絶対に降伏はしない」 |
リュナン |
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「泥沼だな……」 |
ラフィン |
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「公子、このあたりは豊かな中原ではない
辺境の人々の暮らしは過酷だ
食べるものが無くなれば
男は妻子を養うために山賊になる
襲われた村の男たちもまた山賊になる」 |
リュナン |
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「その連鎖を断ち切るためにも
村は守れということか……」
「よし、まずは足の速い騎兵を村に送る
アジトに向かうのはその後だ」 |