ラフィン |
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「サーシャ王女、お待ちしていました」 |
サーシャ |
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「ラフィン!!
どうして迎えに来てくれなかったの
ラフィンが迎えに来てくれると信じて
脱出したのに、放っておくなんて酷い!」 |
ラフィン |
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「申し訳ありません
王女脱出の知らせが入ったのは昨日
急なことゆえ準備に手間取り
出発が遅れました」 |
サーシャ |
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「ラフィンは私のことなんて
どうでもいいのね
信じていたのに酷い……」 |
ラフィン |
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「申し訳ありません……」 |
サーシャ |
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「ふふっ
うそよ、ラフィン
ちょっとからかってみただけ」 |
ラフィン |
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「……」 |
サーシャ |
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「あ、怒ったの?
だってラフィンはいつも冷静なんだもの
慌てる様子が見たかったの」
「でも、怒ったのなら謝ります
ごめんなさい……」 |
オイゲン |
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「……サーシャ様
よろしければご紹介願えませんかな」 |
サーシャ |
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「あ……はい……
この方は……」 |
ラフィン |
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「ヴェルジェの領主マーロンの子
ラフィンです」
「お話を伺う前に
まずは館にお入りください
父上もお待ちしております」 |
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マーロン |
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「……
なるほど、そのような事情でしたか」
「青き聖竜の軍旗と聞き
もしやと思っておりましたが
やはりリュナン殿でしたか
それで当地へは、兵を募りに
参られたわけですな」 |
オイゲン |
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「さようです
ラゼリアはリーヴェ4公国の一つとして
大陸でも有数の
騎士団を擁しておりましたが
相次ぐ戦いによってそのほとんどを失い
今や数十名の兵士を残すのみ」
「これでは祖国奪回もままならず
かねてより親交厚いウエルト王国に
援助を求めて参ったのです」 |
マーロン |
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「だが、すでのご存知の通り
我が国も内乱のさなかにあります
ウエルト王宮は、親帝国派の宰相に
牛耳られ、王妃の安否さえ不明です
これでは兵をお貸しするなど
とても不可能ですな」 |
リュナン |
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「マーロン伯爵、コッダ宰相とは
どのような人物なのですか?」 |
マーロン |
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「国祖サザーランド家の血を引く
名門貴族で、王都の北に広大な領地を
持っております」
「ただ、その性格は軽薄にして残忍
領民に過酷な税を課し、娘を奪い
逆らうものはみな処刑するという
有り様です」 |
リュナン |
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「そのような男を
なぜ野放しにしておくのです
なぜ王宮から追放できないのです?」 |
マーロン |
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「ご存知のように
我が国は半年前のバルト戦役で
多大な損害をこうむりました」
「出陣にあたっては
コッダを始めとする諸侯の大半が反対し
休戦を求める帝国との
平和共存を望んだのですが
邪教ガーゼルと手を組んだ帝国を
そのまま放置すれば、やがて世界は
破滅に向かうと国王は申されて
王家に忠誠を誓う、心有る諸侯たちは
みな王と共に出陣いたしました」 |
オイゲン |
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「なるほど
それで生き残った諸侯たちは
コッダのようなくだらぬ
男ばかりというわけですか」 |
マーロン |
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「さよう
恥ずかしながら、私も
生き残った一人でありますが……」 |
リュナン |
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「王はあなたを信頼して
留守を託されたのでしょう
コッダの野望を
阻止する方法はないのですか?」 |
マーロン |
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「これまで何度も諫めてまいりましたが
彼は聞く耳を持ちませぬ
この上は、武力をもって
王都の解放をなすしかありませぬが
我がヴェルジェの兵力だけでは
それもかなわぬのです」 |
リュナン |
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「コッダの兵力はそれほど大きいと?」 |
マーロン |
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「それもありますが
我がヴェルジェの主力騎士団は
長男と共にバルトへ出陣し
今残っているのは、次男ラフィン配下の
わずかな兵士だけなのです」
「その上
我らが身動きできぬのをよいことに
トーラスの山賊どもが出没し
日々、村々を襲っております
私には彼らを守る義務があり
この砦を空けることすら
容易ではないのです」 |
リュナン |
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「……わかりました
その山賊討伐は我らがいたしましょう
しばらくは立ち上がれぬ程度に
討伐してまいります
その上で、ウエルト王国解放の
ご相談をさせていただけませんか」 |
マーロン |
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「むろん私に異存はございませんが
お願いしてもよろしいのですか?」 |
リュナン |
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「はい、お任せください!」 |
マーロン |
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「ではラフィン、お前も行くがよい
ラゼリアの方たちだけでは
地理も不案内であろう……」 |
ラフィン |
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「はっ……」 |
エステル |
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「父上、私もまいります!」 |
ラフィン |
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「だめだエステル
お前は砦に残っていろ!」 |
マーロン |
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「いや……
よかろうエステル
騎士となったからには戦いは避けられぬ
我が娘として恥ずかしくない戦いをせよ」 |
エステル |
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「はい、父上!」 |
マーロン |
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「リュナン殿、有能な者をあと1名
お付けいたします
どうぞ、こちらへ」 |
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マーロン |
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「この者たちは、リュナン殿と共に
出陣を願っております
ただ、城の守りも必要ですので
このうち1名だけをお連れ下さい」 |